@ 「HUB-IBARAKI ART PROJECT 2024」クリエイトセンター、茨木市(大阪)
茨木の各地で採集した水・様々な草木・土壌・粘土・岩石・川砂・スラグ・竹・稲藁・枇杷の葉・大根・カブ、薪ストーブ、菜種がら、布、糸、それらで作った様々なモノ、バケツ、金盥、テキスト、地図、 本、写真、資料など
発表に向けて1年間ほど大阪茨木市に通ってフィールドリサーチを行なったアートプロジェクト。茨木を訪れたのは初めてで、市街地から北へ向かって車を走らせると、二本の高速道路やダムを挟んでいつの間にか広大な山間部へと至りました。街や道路を覆うコンクリートやアスファルト、土が剥き出しになった造成中の開発エリア、そして草木が生い茂る山々と、人間が土地に生きることによって自然に手を入れて開発、都市化してきた過程が南北で見えくる場所だと感じました。
古代から人間は清い水の湧くところに住み着き、耕作を始めると河川から水を引いたり灌漑を行なってきました。田んぼのために溜池を掘りつつその土を盛って古墳を作っていた逸話は造成や開発の始まりを想像させ、土を焼いて土器を作ることは、“土に還らない”モノづくりの始まりを想起させます。そして、少しずつ私たちの身体感覚から離れた規模や速度へと発展し、循環しないモノや仕組みが当たり前になっていきました。そして、それらの延長上に私たちの便利で過剰な暮らしがあることが改めて見えてきました。
都市化や利便性と引き換えに失ってきたこと、まだ残っているもの。私たちの見えないところで進行している様々なものごとに目を向け、分からないことや出来ないことにぶつかりながら、それでも気持ちいいと思う方向に向かって模索し、人間が土地に生きるとはどういうことなのかを、この土地を知ることを通じて、立ち止まって考え直す機会にしたいと考えました。
また、地域やその未来を考えている方々から話を聞くにつれ、これらの内容こそ皆と共有したいと考え、土地のことを共に感じ、共に学ぶ機会にしようと考えました。そこで、地域の人々の言葉と風景を重ねた映像を始め、土地の素材や習俗を手がかりに手仕事で作ったモノ、肌で感じたことを素直に書いたテキスト、関連する興味深い資料、茨木をじっくり味わうための関連プログラムを散りばめ、この土地のことが緩やかに立ち上がってくる発表を目指しました。そして、会期の最後には作った作品や使用した草木を燃やして、その様をみんなで眺めました。灰は持ち帰って我が家の畑の土壌に混ぜ込み、そこに植えたじゃがいもは元気に芽を出しました。
photo_Tomoya Hasegawa (1,2,3,5,6,7,8,9,17,19,20th), Shunsuke Maekawa (4,10th), Tatsuki Katayama (11,12,13,16th)
@ 「国際芸術祭あいち2022」ラーニング / Aichi Triennale 2022_ Learning(愛知)
"ほの国"の各地で採集した土・砂礫・石・漂着物・流木・貝殻・藁・竹など、それらで作った様々なモノ、三河木綿、蚕繭、絹糸、ヤッケ、"ほの国"関連のチラシ、みかん収穫籠、 出荷用ダンボール、地図・ 本・写真・資料など
渥美半島を含む東三河地方 “ほの国” は、古代から海や河川、陸路の交通を介して東西を結ぶ人・モノ・文化・情報が盛んに行き交う場所だった。私たちの祖先は南方から黒潮に乗ってやってきたとも言われ、海を通じて伊勢や紀伊半島と密接に繋がっていた時代には西からの新しい文化がいち早く伝わる土地だった。近世になってからも海辺や河岸に点在する湊には帆掛け船が行き来し、陸路とも繋がりながら様々なものが行き交った。人々は外部からやって来るものとの出会いに高揚したり戸惑ったり、時には恐れを抱きつつ、選択と淘汰を繰り返しながら、自らの暮らしや文化の中へと取り込んでいったのではないか。
芸術祭も様々な人が訪れ、出会う“meeting point ”だ。そうした結節点には自然発生的に“市(いち)”が生まれ、持ち寄ったモノゴトを「交換/交易する」ことが始まる。いつの時代も、人間はその土地の資源を採集し、加工してモノを作り、交換という行為を通じて欲しいものを手に入れてきた。そこで、私たちも“ほの国”にある資源(知恵、技法、素材、民話、文様など)を収集し、活用していくことで、土地の物語を含んだ新たな「交易品」を作りだそうと試みた。そして会期中、会場に“市”を立て、来場者が持ってくる価値のある何か(=それはモノであるかもしれないし、知恵や行為かもしれない。)と交換していった。
この土地を出発点に、“移動”や“交易”といった人間の行為や営みについて考えていくことで、この世界の在り方を改めて知っていく機会にしたいと考えており、今後も継続して進めていく予定。
琵琶湖の近くに住むようになり、ふとした時に湖を目にする生活が始まった。今では漁船や釣船、観光船をチラホラ目にするくらいで静かな湖面だが、かつては湖岸に湊が点在し、人や荷物を積んだ大小様々な舟が盛んに行き交っていたことを知り、湖と密接に繋がった人々の営みとその活気溢れた湖上の情景に心が踊った。そして、いつかワクワクするような光景を湖の上に作ってみたいと考えている。
今回は手始めとして、湖を取り巻く自然や気候とコミュニケーションをとりながら、琵琶湖を遊ぶ/移動するための道具として帆のある筏を制作し、実際に琵琶湖を帆走したいと考えた。風を孕む<帆>の部分はお菓子の袋などの食品パッケージを縫い合わせ、<浮き>部分はペットボトルを繋ぎ合わせ、<本体>は竹をロープで組むなど、日々の生活の中で収集した身近な素材と手法を使って試行錯誤しながら制作。また、一緒に旅する仲間を募り、風を受けて帆で進むためのセーリング技術を習いながら、琵琶湖での試乗と改良を経て、自作した帆筏で琵琶湖を南下するための準備を進めていった。現時点ではクリア出来なかった問題があり、今回の旅は予定より短い日数とルートで、滋賀県高島市新旭町木津浜から出発して、夜は浜辺に上陸してキャンプをしながら3日間かけて大津市北小松まで南下した。風のない時は櫂を漕いで進み、風が吹けば帆と舵を操作して湖上をグングンと走ることが出来て、"乗りモノ"を作った歓びを感じた。
今後は、山から切り出した木材を川に流して琵琶湖を通って都や主要部まで運んだ「筏流し」や、縄文期に作られ使われた大きな木を刳り貫いて作る「丸木舟」など、かつての湖岸の人々の生活や生業、舟運も絡めながら、引き続き河川と海との繋がりも視野に入れて次の展開を模索していきたいと考えている。人間が身の回りにある素材を加工して道具を作り出し、それらを使って自然に対峙し、自然の力を生かしながら移動したり生業や交易を行ってきたことを自分の身体を通して探っていきたい。
photo_Koji Tsujimura(1st,15th) Seiji Sano(11,12,13,14,16,17th)
@「ゆいぽーと自主活動プログラム 2020冬季 アーティスト・イン・レジデンス」
海の近くにある新潟市芸術創造村・国際青少年センター“ゆいぽーと”を拠点に、新潟市内各地の浜辺を歩き回って漂着物を集めながら、その背後にある人の営みや自然の営みを含めた壮大な繋がりや関係について改めて発見していくためのリサーチを開始しました。今回は、ゆいぽーと内のスタジオを「唯ぽーと:海辺の漂着物収集所」として1ヶ月間公開し、集めた漂着物を資料館のように展示すると共に、人・漂着物・情報などが〈港〉のように行き交う場を作りたいと考えました。これから、長期的なプロジェクトとして、多くの人たちに参加してもらえるような仕組みを作りながら、作品へと繋げていきたいと考えています。
photo (last 14 pieces) _中村脩(提供:新潟市芸術創造村・国際少年センター/ゆいぽーと)
@『PORT JOURNEYS SAN DIEGO⇄YOKOHAMA:YUI INOUE』 Oceanside Museum of Art, Several place of San Diego
2015/05/07 - 2015/06/14
世界のクリエイティブな港湾都市を繋ぐアートプロジェクトで、アメリカの西海岸サンディエゴに1ヶ月滞在し制作を行った。様々なback groundを持つ人たちが暮らすこの地では、通りすがりに出会った人たちが笑顔でおしゃべりを始め、何度もAwesome!と感嘆の声をあげる。そんな陽気な人たちに囲まれ、強い日射しと海風を浴びながらどこまでも広がる高い空を見上げているうちに、あっけらかんとした明るさの作品を作ろうと思った。そこで、カタチを変えながら国境や海を越えてどこまでも飛んでいける<雲>をモチーフにしようと考えた。そこで、現地で見つけたカラフルな電線やシャワーカーテンといった身近な素材を使い、編んだり縫ったりと、みんなで様々なカタチの雲を作り、強い海風を孕ませながら大きな空の下に浮かべていった。
ポート・ジャーニー・プロジェクト PORT JOURNEY :http://www.portjourneys.org/
電線・電話線、シャワーカーテン、ビニール袋 electric wire, shower curtain, plastic bag
@『PORT JOURNEYS SAN DIEGO⇄YOKOHAMA:井上唯 帰国展』 象の鼻テラス(横浜)
2015/07/03-26
San Diegoでつくった雲たちが海を渡って、横浜へやってきた。そして横浜でも、みんなで一緒に新たな雲をつくり、雲で遊んだ。
いつのまにか現れ、いつのまにか消えているキノコ。もしかしたら、キノコたちは旅をしているのかもしれません。あたりが暗くなる頃、キノコたちは囁くようにそっと光りはじめます。次は、どこに現れるのでしょうか。
photo_Syunya.Asami
@『 旅するキノコin氷川参道 』OMIYAプロジェクト/「さいたまトリエンナーレ2016」市民プロジェクトとして
2016/11/19-27 @平成広場周辺(大宮)/制作アシスタント:岡嶋聡美
かつて大宮はキノコの名産地だったそう。今回は、参道でもあり、人々が行き交う生活の場でもある氷川参道の片隅にキノコたちが出現。SMF学校の「ヒカルキノコを作ろう」ワークショップでみんなが作ったキノコたちも生え揃い、夜の参道をほんのりとした白い光りでそっと賑わしました。
@『 旅する小さな家がやってきた/旅するキノコ』日本茶喫茶 楽風、青山邸(埼玉)
2015/11/19-24
制作アシスタント:岡嶋聡美
落ち葉の舞い散秋の庭。アート空間デザインコンペで建築家チームが制作した<旅する小さな家>のまわりにキノコたちがひょこひょこと姿を現します。道を挟んだところにある青山邸にもキノコたちが現れました。
@『 風と土の交藝 in 琵琶湖高島 2014』新旭水鳥観察センター(滋賀):会期中イベントとして
2014/ 11/28
水鳥が集まる琵琶湖岸は、夜になると静寂と暗闇に包まれます。光っているのは空の星々とキノコだけ。
@『 SMART ILLUMINATION YOKOHAMA 2014』象の鼻テラス(横浜):会期中イベントとして
2014/10/31, 11/01
ワークショップで、参加者が思い思いのキノコを編んで、港の夜の風景のなかにキノコをそっと光らせていきました。草むらでひっそりと光るキノコたちの、小さなしゃべり声が聞こえてきそうです。
photo_ AMANO STUDIO